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こんばんは、ひろしです。

今日は、乾麺パスタの話。

僕は20年、イタリア料理の現場でパスタを作り続けてきました。

正直に言うと——使ってきた銘柄は、時期によって、ずいぶん変わってきました。
「これが正解」という一本が、ずっとあったわけじゃない。

だから今日は、ランキングというより、僕が現場で使い分けてきた話として、書きます。

でも、迷っている人のために。答えは、先に置いておきます。

乾麺パスタの選び方ボード。ツルッと食べたいならバリラ、ソースを絡めたいならディ・チェコ、いまはアルチェネロ、ちょっといい日はグラニャネージ、ブロンズを気軽にモンスーロ、パーティーの日はイカ墨のスパゲッティ
役割で分けた6つ。順位ではありません。

途中の「寄り道」は、たたんであります。気になったところだけ、開いてみてください。

僕が使ってきた、乾麺パスタの変遷

料理人が20年で使ってきた乾麺の変遷。ディ・チェコ、バリラ、グランフィーロ、モリサーナ、モンスーロ、いまはアルチェネロ。店ごとにグラニャネージ、ディベッラ、ダルクオーレ
ふだんの一本と、その店・その時期の一本。
チーズの塊の中でパスタを和えるイタリアの料理人
イタリアで。チーズの塊の中で和える、本場の一皿。何度見ても、惚れ直す。

最初は、ディ・チェコ。
次に、バリラ。
そして、グランフィーロ。モリサーナ。
いまは、アルチェネロ。仕事でも家でも、これです。

途中には、グラニャネージ、ディベッラ、ダルクオーレ、モンスーロも。
どれも、この先で出てきます。

ここぞ、というときは、タンマ。
もっと特別な日には、ミナルドのスパゲッティ。

なぜ、こんなに変わってきたのか。
それは「ブロンズダイスか、テフロンダイスか」という、麺の作り方の違いと関わっています。

そもそも、何が違うのか ― ブロンズダイス と テフロンダイス

ブロンズダイスとテフロンダイスの違い。ブロンズは表面がざらざらで白っぽく、ソースがよく絡む。テフロンはつるつるで黄色っぽく、ツルッとした食感
型(ダイス)がちがうと、麺の表面がちがう。
イタリアのトラットリアで供されたカルボナーラ風スパゲッティ
トラットリアにて。

乾麺パスタは、生地を「ダイス」という型から押し出して作ります。
この型が、青銅(ブロンズ)か、テフロンか。それで、麺の表面がまるで変わる。

ブロンズダイスの麺は、表面がザラザラしています。
だから、ソースが絡みやすい。

テフロンダイスの麺は、表面がツルツル。
だから、つるっとした、いい食感が出る。

お店で見分けるなら、袋の表示を見てください。
「ブロンズダイス」、イタリア語なら「trafilata al bronzo」と書いてあれば、ブロンズです。
麺の色も、ちがいます。ブロンズは白っぽくて、つやがない。テフロンは黄色っぽくて、つやがある。

僕の使ってきたものでいうと——
ディ・チェコはブロンズ。バリラはテフロン。グランフィーロもテフロン。
モリサーナは両方(種類による)。モンスーロも、アルチェネロもブロンズ。
※各社、商品によってどちらもあります。

ここで、勘違いされがちなこと。
「ソースが絡む方が、いいに決まってる」と思いますよね。

——でも、違うんです。

大事なのは、ソースとの相性。そして、好み。

絡めばいい、というものじゃない。
自分が、その一皿で、どんな絡み方を目指すのか。それで変わる。

僕の使い分けは、こうです。

ツルッと食べたいものは、テフロン。アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノとか、ペスカトーレとか。
麺にしっかりソースを絡めたいときは、ブロンズ。

ひろし

どちらが正解、ということもない。それで、店の個性が出る。

家庭で買うなら、この乾麺パスタ

この記事の乾麺をどこで買えるか。スーパーでもバリラ、ディ・チェコ、ガロファロ。カルディでモンスーロ。ネットや専門店でアルチェネロ、グラニャネージほか
色は型(ダイス)のちがい。2026年10月の時点です。

とはいえ、家庭で何本も常備するのは、現実的じゃない。
「まず一本」を選ぶなら、という目線で、僕が本当に使ってきた中からおすすめします。

迷ったら、ツルッと派:バリラ No.4(1.6mm)

「いちばん手に入りやすいのは?」と聞かれたら、バリラ。
スーパーでも、たいてい置いてある。テフロンダイスの、つるりとした優等生です。

テフロンならバリラ、ブロンズならディ・チェコ。

迷ったら、ソースを絡めたい派:ディ・チェコ No.11(1.6mm)

僕が、最初に使った一本。
1.6mm——正確には、スパゲッティーニ(スパゲッティより、少し細い)。
この太さが、日本人にはいちばんしっくりくると思う。

ブロンズダイスの、世界標準。どこでも手に入る。迷ったら、これ。

いま、仕事でも家でも:アルチェネロ(1.6mm)

二、三年前から、アルチェネロです。
きっかけは、スペルト小麦。スペルト小麦のパスタを使ってみたくて、ついでにスパゲッティも試してみたら、とても良かった。

有機の小麦で、ブロンズダイス。1.6mm。
通販で手に入るし、仕事用には5kgの袋もあります。

ひとつだけ、注意。全粒粉のほうは、香りはいいけれど、プツプツと切れやすい。
扱いが難しいので、最初はふつうのスパゲッティから。

ちょっといい日に:グラニャネージ(1.8mm)

高めだけど、本当に美味しい。
茹でただけで、美味しい。

山の上にあった頃のviva la vitaでは、このスパゲッティを茹でただけの「釜揚げ」で出していました。チーズは、パルミジャーノを別添えで。
それで一皿になる麺です。

山の上の小さな店の窓辺。茹でただけのスパゲッティの皿と、別添えのパルミジャーノ
茹でただけの「釜揚げ」と、別添えのパルミジャーノ。

グラニャーノIGP。ブロンズダイスで、ゆっくり乾かしてあります。

ブロンズを気軽に:モンスーロ No.118(1.7mm)

ナポリ近くの町、グラニャーノのパスタ。ブロンズダイスで、低温でじっくり乾燥させている。
本格的なのに、カルディなんかで気軽に買える。ブロンズの入り口に、ちょうどいい。

パーティーの日に:モリサーナの、イカ墨スパゲッティ(1.7mm)

イカ墨を練り込んだ、黒い乾麺。ふつうのより少し高いけれど、美味しい。

最初は、試しに一袋買ってみただけでした。
家で作ってみたら、子どもたちが、すごく気に入って。そのときのソースが、たまたま魚介でした。

次のパーティーの買い出しのとき。
子どもたちは、ちゃんと覚えていたらしく、自分たちで、このイカ墨のパスタを選びました。

それからは、我が家のパーティーの定番。このイカ墨スパゲッティに、魚介のソース。仕上げに、ペコリーノ。
めっちゃ美味しいです。

パーティーの食卓に、魚介をのせたイカ墨のスパゲッティとペコリーノ
我が家のパーティーの定番。

ほかにも、使ってきた乾麺

店によって、時期によって、ほかにも使ってきました。

ディベッラ(テフロン・1.75mm)。
ダビデが、好んで使っていました。テフロンで、コシが強くて、アルデンテが長持ちする印象。

ダルクオーレ(ブロンズ・1.7mm)。
ピソリーノの後期に、僕が好んで使っていた。食感がよくて、香りがいい。これもグラニャーノIGP。

タンマ(ブロンズ・No.4)。
プーリアの、1907年から続く老舗。
表面がザラついて、もちっと強いコシ。特別な一皿に。

ガロファロ(ブロンズ・1.7mm)。
もう少し、いいものを。という日は、ガロファロ。
グラニャーノのIGP——本場の名産地の名前を背負った、ブロンズの一本です。

モリサーナのふつうのスパゲッティ(中価格で、コシがしっかり)や、グランフィーロ(テフロン)も、一時期よく使いました。

そして、僕の「特別な日」のパスタ ― ミナルドのスパゲッティ

これは、買いやすさで選ぶ一本じゃありません。

シチリアのミナルドという作り手が、古代小麦と、ミネラルウォーターだけで作り上げるパスタ。

日本に輸入しているのは、僕の友人の、ルーチョ。
品切れのときは、次の入荷まで待ちです。
でも、香りが、最高なんです。

オリーブ畑に立つルーチョさんたち Oliva Sicula Shop(ルーチョさんの店) シチリアのオリーブオイルと、ミナルドのパスタの店 olivasiculashop.com

ちなみに——同じ店のオリーブオイルも、僕は愛用しています。
これがまた、最高。香りが、ぜんぜん違う。

本当は、ソースで麺を変えるべき

ソースと麺の形の組み合わせ。アマトリチャーナにブカティーニ、グリーチャにリガトーニ、ペスカトーレにリングイネ、冷製パスタにカッペリーニ
ソースの濃さ、絡み、食感で、形を変える。
ローマで食べた、リガトーニ・アッラ・グリーチャ。グアンチャーレ、ペコリーノ、黒胡椒。生クリームは入っていない
グリーチャには、太くて筒状のリガトーニ。ソースを、中まで抱き込む(2017年9月、ローマで)。

ここまで「銘柄」と「ダイス」の話をしてきたけど、本当のことを言うと——
パスタは、合わせるソースで、形ごと変えるべきなんです。

現場では、こう使い分けます。

料理合わせる麺
アマトリチャーナブカティーニ(穴あきの太麺)
グリーチャリガトーニ(太い筒)
ペスカトーレリングイネ(楕円の断面)
冷製パスタカッペリーニ(極細)

ソースの濃さ、絡み、食感。それぞれに、いちばん合う形がある。

イタリアのパスタ店に並ぶ生パスタ
イタリアのパスタ屋。生パスタが、当たり前みたいに並んでいた。
アッシジのレストランのほうれん草入り生パスタ
アッシジの店の、ほうれん草を練り込んだ平打ち麺。形が変われば、合うソースも変わる。

だから、家庭で選ぶなら、食べやすい1.6mm か 1.8mm を基本に。
たまに「今日はペスカトーレだから、リングイネ」と一本足す。
そのくらいが、ちょうどいいと思います。

「パスタ料理は、パスタを食べるものだからね」

これは、修行時代の話。

あるイタリア人に、こう言われた。
「パスタ料理は、パスタを食べるものだからね」

最初は、意味がよく分からなかった。当たり前じゃないか、と。

でも、たぶん認識の違いだった。
僕はどこかで、ソースは少し多めに——と思い込んでいた。たぶん、日本人っぽい感覚で。

向こうの正解は、こうだ。
パスタを食べ終えたとき、ソースもちょうど、なくなっているくらい。
皿にソースが残らない。麺が、ソースを着ているだけ。

主役は、あくまでパスタ。ソースは、それを引き立てるもの。

食べ終わってソースがほとんど残っていない白い皿とフォーク
食べ終えたとき、ソースもちょうどなくなっている。

今回の写真を見返していて、思い出した。
本場で撮った一皿は、どれも、皿の上でソースが泳いでいない。
たぶん、あの一言は、こういうことだったんだと思う。

どんな高級パスタも台無しにする「茹で方」の話

アルデンテは仕上がりから逆算する。鍋で茹でて、フライパンでソースと和え、皿へ。茹で汁の塩は通説1%、料理人は1.5〜2%、家庭は1%から
アルデンテは逆算。塩は、足せても引けない。

最後に、いちばん大事な話を。

よく「アルデンテは、表示時間より●分早く上げる」と言われます。

——でも、本当は、違うんです。

何分早く、なんて決まりはない。
どんなソースと、どう合わせるか。そのとき、どれだけ火を入れるか。それで、全然変わる。

たとえばカルボナーラなら、早めに上げる。
ソースと和えるときに、まだ火が入っていくから。

アルデンテは、時間じゃない。仕上がりから、逆算するもの。

塩は、どのくらい?

通説では、「湯の1%」と言われます。
湯2リットルに、塩20グラム。

正直に言うと、僕には、少し少なく感じます。

僕は、たぶん1.5%か、もう少し濃いくらい。2%近いかもしれない。
(いつも量ってるわけじゃなくて、味で確かめているので、正確じゃないけれど。)

寄り道塩を濃くすると、何が変わる?タップで開きます

茹で汁の塩には、二つの意味があります。
ひとつは、塩味。
もうひとつは、食感。

(食感は、本当は水の硬さ——硬水か軟水か——の方が関わると思っていますが、日本の家庭の水なら、そこは気にしなくていい。)

濃いほうが、食感にメリハリが出る。
でも、その分、ソースの塩分も計算しないといけない。
乳化のために足す茹で汁の塩も含めて、ぜんぶで調整する。だから、少し難しい。

家庭でなら、1%が、ちょうどいいのかもしれません。
僕は、食感と塩味のバランスを取って、少し濃いめにしています。

修行時代に、よく言われた言葉があります。

「塩味は、足すことはできても、引くことはできない」

濃すぎたら、もう、戻せない。
だから、最初は控えめに。味を見ながら、決めていく。

これは、パスタだけじゃなく、料理ぜんぶに通じる話です。

この記事で紹介したもの

この記事に出てきたものを、まとめておきます。

押すと、その説明のところまで戻ります。買うところではなく、まず説明を読んでもらえたらうれしいです。

迷ったら

テフロンの代表。つるっと軽いバリラ スパゲッティ No.4(1.6mm)↓ブロンズの世界標準。どのソースにもディ・チェコ No.11 スパゲッティーニ(1.6mm)↓

いま、仕事でも家でも

有機、ブロンズ。通販で手に入るアルチェネロ 有機スパゲッティ(1.6mm)↓

ちょっといい日に

茹でただけで美味しい。グラニャーノIGPグラニャネージ スパゲッティ(1.8mm)↓パーティーの定番。魚介とペコリーノでラ・モリサーナ イカ墨スパゲッティ(1.7mm)↓

ブロンズを気軽に

カルディで買える。グラニャーノモンスーロ スパゲッティ No.118(1.7mm)↓

ほかにも、使ってきた乾麺

テフロン。コシが強く、アルデンテが長持ちディヴェッラ No.8 スパゲッティ(1.75mm)↓ブロンズ。食感と香りダル クオーレ スパゲッティ(1.7mm)↓ブロンズ。もちっと強いコシタンマ スパゲッティ No.4↓グラニャーノIGP。スーパーでも見かけますガロファロ スパゲッティ(1.7mm)↓特別な日に。ルーチョさんの店でミナルドのスパゲッティ↓

まとめ

まとめ。銘柄は変わっていい、ダイスは相性で選ぶ、アルデンテは逆算・塩は引けない

プロでも、使う銘柄は変わる。唯一の正解はない。
ブロンズか、テフロンか。優劣じゃなく、ソースとの相性で選ぶ。
家庭なら、テフロンはバリラ、ブロンズはディ・チェコを基本に。いまの僕は、アルチェネロ。
そして、茹で方。アルデンテは時間じゃない。塩は、引けない。

道具も、食材も、結局は「自分が、どうしたいか」。
そこから選ぶと、失敗しません。

魚介と春野菜のアーリオ・オーリオ風スパゲッティ
魚介と春野菜の、シンプルなオイルのスパゲッティ。

今日の一曲

今日の一曲は、ボビー『炎のたからもの』。

ルパン三世『カリオストロの城』の——あの、ルパンと次元が、山盛りのスパゲッティを奪い合うように頬張る、あの場面の歌です。

僕が「パスタって、こんなに旨そうなものなのか」と最初に思ったのは、たぶん、あのシーンだった。
何の変哲もない、ミートボールのスパゲッティ。それが、世界でいちばんおいしそうに見える。

銘柄だ、ダイスだ、塩分だと——さんざん理屈を書いておいてなんだけど。
いちばん旨いパスタは、案外、ああいう一皿なのかもしれません。

誰かと、笑いながら、奪い合うように食べる。
たぶん、それが、いちばんのレシピです。

ひとりではなく、ふたりで——この二行も、いちばんのレシピとおなじことを歌っています。

凍てつく夜も

二人で渡って行きたい

ボビー「炎のたからもの」(作詞 橋本淳/作曲 大野雄二)より

本日もお読みいただき、ありがとうございました。