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こんばんは、ひろしです。

今日のテーマは、塩の話です。

イタリア料理の現場で20年。家でも店でも、塩は5種類を使い分けています。

その5種類が、それぞれぼくの人生のどこかからやってきました

大阪生まれ、北陸で10年以上の修行、そして島根の雲南市から出雲市へ。

歩いてきた土地の数だけ、塩との出会いがあった

今日はその5つの話です。

1本目|普段の海塩 — シチリア・エガディ・サーレ・フィーノ

普段、なんにでも使う塩。

シチリアの、エガディ諸島の海塩です。

イタリア料理人として、これがなければ始まらない、毎日の塩

業者経由で買っていますが、いまはふつうのお店でも手に入ります。

決め手は、粒の荒さ

指でつまんだときの感覚が、ぼくの手にぴったり合うんです

味も、安定している。

毎日のパスタを茹でるとき、肉に当てるとき、野菜を炒めるとき——

ほとんどの場面で、これを使います

2本目|仕上げの定番 — ゲランドの塩

仕上げに使う塩。

フランス・ブルターニュ地方、ゲランドの塩。

世界中の料理人が、最後のひとつまみに選ぶ、塩の華

いろんな塩を、ずっと試してきた

これまで、本当にいろんな塩を試してきました。

そのなかで、ゲランドにたどりつく。

そして——

やっぱり、美味しい、と思うんです

シンプルだけど、それが答え。

3本目|ゲランドを超えた、島根の塩 — 浜守の塩

そして、その「世界基準」をぼくの中で超えた塩があります。

島根県浜田市。

地元のサーファーたちが、浜辺で海水を炊き上げて作る、塩の華。

その名は 「浜守の塩」

島根に来て3年目、偶然の出会い

島根に来て3年くらい経った頃のことです。

仕事で島根の西側まで行く機会があって、そこで偶然出会いました。

プールのような釜と、薪と、時間

プールのような大きな釜に海水を満たして、薪でゆっくり火を入れていく。

その現場を、目の前で見せてもらったんです。

まだ販売の流通も整っていなくて、できたばかり、という感じでした。

ひろし

ひろし

このひと粒に、どれだけの時間と労力が注がれているか——目で見て、知ってしまった。

ゲランドはたしかに、美味しい。

でも ぼくの中では、浜守がそれを上回りました

▶ 浜守の塩 公式オンラインショップ:https://www.hamamori-shop.com/

4本目|北陸の記憶 — 珠洲の結晶塩

もうひとつ、忘れられない塩があります。

金沢で修行していた頃、出会った塩。

能登・珠洲市で、海水だけから作られる、純粋な結晶塩。

主菜の皿に添えて、お客様に、肉や魚と一緒に味わっていただく塩でした。

本当に偶然の出会い

これは、本当に偶然の出会いでした。

学生のころジャズをやっていて——

珠洲市で毎年、ジャズのイベントがあった。

そのイベントを何年も追いかけて通っていたんです。

その流れで、ふと知った塩。

主菜の皿に、ひと粒

主菜の皿にひと粒、添える。

お客様が肉や魚に、自分でつけて食べる。

塩そのものの存在感を、料理に組み込む、という使い方でした。

▶ 珠洲の結晶塩 公式:https://suzutennen-shio.jp/products/detail.php?product_id=43

5本目|自家製の桜塩 — 木次ワイナリーの記憶

桜のセミフレッド|桜塩を使ったLa Feniceのドルチェ

もうひとつ、塩の話があります。

もう、買えない塩

自分で作っていた、桜の塩。

声をかけてもらって、知らない土地、島根の雲南市にやってきました。

不思議なことに、妹も同じ雲南市に嫁いでいて——

知らない土地のはずなのに、そっと、心が支えられました

ワイナリーのある木次(きすき)は、日本桜名所百選にも選ばれる、桜の名所です。

町ぜんぶが、春には桜に染まります。

「自分にできることは、なんだろう」

「自分にできることはなんだろう」と、ずっと考えていました。

たどりついた答えは、シンプルでした。

——「ここでしか味わえない料理を、地元のもので作る」

休みの日をぜんぶ、食材探しに使いました。

奥出雲和牛、地野菜、季節の魚。

ひとつひとつの食材の向こうに、生産者さんがいる。

その出会いは、ぼくの宝物になりました

そのなかで出会ったのが、桜の塩漬けでした。

地元・木次の「木の花工房」さんが、毎年、春になるとリリースする一品。

これを、どう生かそう、と考えました。

まず生まれたのが、桜のメリンガ

イタリアの伝統菓子メリンガに、桜の塩漬けを火入れして、もう一度花を開かせて載せる。

食後のコーヒーといっしょに、お客様へのサービス菓子として。

そして、桜塩

桜の塩漬けを、まるごと火入れしてパリパリにする。
それを、粉末にする。

塩気と、桜の香り。
ピンク色の、皿に映える塩
でした。

コース料理のメインに、付け合わせとして添える。

鴨肉のロースト|桜塩を添えて

お客様の反応は——

びっくりするほど、よかった

奥出雲和牛のロースト|桜塩を添えて

あの塩は、買えません。
ぼくが、あの土地で、その季節に、自分の手で作ったものだから。

でも——

料理人は、土地を歩いて、土地のものを、自分の手で塩にもできる

そういう、塩のかたちもあるんです。

▶ 木の花工房さん:公式ブログ / Instagram

5つの塩、5つの土地、5つの時間

シチリアから始まって、ゲランドにたどりつき、そして島根の浜辺と、能登の海と、木次の桜にたどりついた。

ぼくの塩の話は、ぼく自身の、人生の地図でもあります

どこに住んで、誰と出会って、どんな時間をすごしたか——

それが塩のかたちで、いま、ぼくの台所にぜんぶ並んでいる。

「塩」って、ふだんは脇役だけど、ほんとうは、料理人の歴史を、いちばん静かに、いちばん深く、覚えている——そんなふうに、思うんです。

あわせて読みたい

今日の1曲

今日の1曲は、SUPER BUTTER DOG の「サヨナラCOLOR」。

色の話を、しているんです。

過ぎていく時間。
渡してきた言葉。
別れていったひとたち。

ぜんぶ、「色」になって、ぼくの中に残っている。

今日書いた5つの塩も——
そのひと粒ひと粒に、色があります。

シチリアの海の青さ。
ゲランドの白さ。
浜田の海の、深い灰色。
珠洲の波の音。
そして、木次の、桜のピンク色。

「サヨナラ」を抱えながら、それでも、ぜんぶ、ぼくの台所に残っている。

そういう曲を、聴きながら書きました。

自分をつらぬくことは とても勇気がいるよ だれも一人 ボッチには なりたくはないから でも 君はそれでいいの? 夢の続きはどうしたの? 僕を忘れてもいいけど 自分はもう はなさないで サヨナラから はじまることが たくさん あるんだよ 本当のことが 見えてるなら その思いを 捨てないで