チーズは、料理の世界を広げてくれた|イタリア料理人と、9つのチーズ
こんにちは、ひろしです。
今日は、チーズの話をします。
スパイスに続いて、また食材の話になりますが、
これは書き始めたら、20年ぶんの引き出しが、一気に開いてしまった話です。
850円のカプレーゼ、その語感と衝撃
いちばん最初の、チーズの記憶をたどると、
ぼくがまだ料理を始める前、ジャズ研の学生だった頃にまでさかのぼります。
ライブを聴きに、あるおしゃれなカフェに入ったときのこと。
メニューに「カプレーゼ」というものがありました。
ぼくは、それが何かも知らずに、
ただ、その語感だけを頼りに注文しました。
値段は 850円。
学生で、お金もなかった。
当時は、外食も今よりずいぶん安かった時代です。
「850円もするのか」と、まず、そこで一度びっくりしました。
出てきたのは、
トマトと、チーズの、サラダ。

「これで、850円⁉」
それが、二度目のびっくり。
生のトマトは、小さい頃から大好きでした。
でも、そのカプレーゼは、トマトも、モッツァレラも、
正直に言って、たいして美味しくなかった。
これが、ぼくとチーズの、最初の出会いです。
ぼくは、クラフト時代を長く生きた
その後、MONDO GROSSO の曲に出会って、なぜか料理に興味を持ちはじめた頃の話。
(このあたりの話は、姉のピアノと、父のレコードとという記事に書いています。)
ぼくが自分で料理をつくりはじめても、
当時、パルミジャーノ・レッジャーノなんていうチーズの存在は、まったく知りませんでした。
使っていたのは、クラフトの、緑の筒に入った「パルメザンチーズ」の粉。
モッツァレラも、スーパーで手に入る、クラフトの丸いやつ。
本を片手にレシピを見ながら、フレッシュトマトとバジリコとモッツァレラのパスタや、
カプレーゼを、そうやって作っていました。

クラフトのモッツァレラを、悪く言うつもりはないんです。
でも、はっきり言って、生で食べても、あまり美味しくなかった。
パスタに混ぜて、少し火を入れると、まあ、それなりに美味しい。
というか、ソースで、ある程度ごまかせるんです。
今思えば、ぼくのチーズの世界は、ずいぶん長い間、
その「クラフト時代」の中にありました。
「給料は要らないので、教えて欲しい」
ここで、少しだけ余談を。
そんなぼくが、初めて「料理を仕事にしたい」と思って、お願いに行った店があります。
そのお店では、募集なんてしていませんでした。
でも、味が美味しかった。
それだけを理由に、閉店後に、アポなしで訪ねていって、
「給料は要らないので、教えて欲しい」と、頼みに行きました。
結果は、丁重に断られました。
そりゃそうです。
店にとって、なんの得もない話でしたから。
ぼくも、まだ、若かったんです。
でも余談ですが、このオーナーシェフには、
このあと、たくさんお世話になることになります。
(その話は、また別の機会に。)
ようやく雇ってもらった店で、本物のチーズと出会う
そうして、ようやく未経験で雇ってもらった、次のお店。
ここで、ぼくは、本物のイタリアの食材と、
どんどん出会っていくことになります。
そのなかでも、チーズの記憶は、いくつも残っています。
パルミジャーノ・レッジャーノとの、初対面

まず、パルミジャーノ・レッジャーノ。
今まで緑の筒の粉しか知らなかったぼくにとって、
本物のパルミジャーノ・レッジャーノは、まったくの、別物でした。
そして、そのとき、初めて知ったんです。
「パルメザンチーズ」って、パルミジャーノ・レッジャーノの英語名だったのか、と。
えっ、あの緑の筒のパルメザンと、この塊が、同じ名前⁉
その驚きは、今でも覚えています。
ブロックで買って、使うたびに、削る。
それだけで、香りが、まったく違います。
お店では、パスタを賄いで作るとき、
「パスタビアンカ」というものを、よく食べていました。
茹でたパスタに、削りたてのパルミジャーノを、たっぷり和えるだけ。
それだけの料理です。
それだけなのに、これが、最高に美味しかった。
賄いの中で、いちばん好きだったかもしれません。
(ちなみに、乾麺パスタの選び方はこちらの記事に書いています。)
パスタと、削りたてのパルミジャーノだけ。シンプルなものほど、素材の力がそのまま出ます。
パルミジャーノは、必ずブロックで買って、直前に削るのが基本です。
ランチなど、忙しくて回らないときは、ランチタイム直前に、
その時間で使う分だけを、まとめて削っておく。
そういう工夫はしますが、それでも、削り置きの時間は、できるだけ短く。
そこにだけは、こだわり続けてきました。
ちなみに、今もサンヨーエンタープライズさんで、素性のはっきりした、素晴らしいパルミジャーノが買えます。
ヴァルセレーナ社の、ブラウンカウ(茶色い牛)のミルクだけで作った、36ヶ月熟成のパルミジャーノ。
非遺伝子組換え・抗生物質不使用の飼料で育てられた、アブルッツォ産のブラウンカウ乳のみ使用。
250gで、5,000円台。素性が完全に分かっているものを、ちょっと贅沢に、というときに。

ちなみに、グラナ・パダーノについて

よく似たチーズに、グラナ・パダーノがあります。
これも、DOP認定の、イタリアの硬質チーズです。
正直に言うと、ぼくの印象と使い方でいえば、
グラナ・パダーノは、パルミジャーノ・レッジャーノの、少し下位互換的な立ち位置です。
美味しいんですが、パルミジャーノと比べると、少し物足りない。
混ぜ物の中に入れるとき、
たとえば、ポルペッティーニ(イタリアの肉団子)や、リピエノ(詰め物)の中身のときは、グラナ・パダーノ。
仕上げに、料理の上に削ってのせるときは、パルミジャーノ・レッジャーノ。
そんな使い分けを、ずっとしてきました。
値段が、けっこう違うので。
パルミジャーノ vs グラナ・パダーノ(プロの視点で)
同じ硬質チーズでも、パルミジャーノ・レッジャーノは、生乳のみ・最低12ヶ月熟成・添加物ゼロという厳しい規格で作られる「濃さ」の代表格。
グラナ・パダーノは、低温殺菌乳やリゾチーム(防腐剤)の使用が認められていて、熟成は9ヶ月から。値段は控えめで、味わいもマイルド。
仕上げに削るなら、パルミジャーノ。
日々の料理に溶かし込むなら、グラナ。
同じ「イタリアの硬質チーズ」でも、役割はきちんと違います。
リコッタチーズは、家でも作れます

お店で教わったことのなかで、
「これは絶対に、家で真似したい」と思ったのが、
リコッタチーズを、自分で作る、というやつでした。
リコッタは、牛乳とレモン汁(もしくは酢)と塩、それだけで、家でも作れます。
牛乳をあたためて、レモン汁を加えて、静かに混ぜて、しばらく置く。
すると、白い塊が浮いてきます。
それを、キッチンペーパーやガーゼで、そっと濾すだけ。
正確に言うと、リコッタ(ricotta)は「再び煮る」という意味で、
本場のものは、チーズを作るときに出る乳清(ホエイ)を、再加熱して作ります。
だから、牛乳から作る家庭版は、厳密には、本物とは少し違う。
でも、味の方向はちゃんとリコッタで、そして、じゅうぶんに美味しいんです。
家で作る、リコッタチーズ
- 牛乳 500ml を鍋に入れ、塩ひとつまみを加える。
- 弱火で、ゆっくりあたためる。沸騰の直前(80℃前後)で火を止める。
- レモン汁 大さじ2(または酢 大さじ2)を加える。ひと混ぜだけして、静かに置く。
- 白い塊(カード)と、透明な水分(ホエイ)に分離してきたら、キッチンペーパーやガーゼで濾す。
- できあがり。冷蔵で 2〜3日保存可能。
できたてのリコッタは、本当に、やさしい味です。
そのまま食べても美味しいし、
はちみつをかければ、そのままデザートになる。
パスタに絡めても、リゾットに加えても、詰め物にしても。
店でよく作っていたのは、
生パスタの中に、リコッタとほうれん草を詰めた、ラヴィオリでした。

手軽なのに、感動的に美味しい。
これは、ぜひ、家でも作ってみてください。
牛乳とレモンだけでチーズが作れると知ったときは、ほんとうに感動しました。お子さんと一緒に作るのも楽しいですよ。
市販のリコッタも、もちろんおすすめです。
イタリアのGalbani(ガルバーニ)社のものは、日本でも手に入りやすく、品質も安定しています。
イタリアから、空輸で届く、生モッツァレラ

お店で、初めて口にした、本物のモッツァレラ。
それは、イタリアから、毎週、空輸で届く、生のモッツァレラでした。
クラフトのモッツァレラとは、まったく、別のチーズだった。
生で食べても、火を入れても、最高に美味しい。
とろけるような、ミルクの香りと、コク。
これが、モッツァレラだったのか、と、しみじみと思いました。

そして、このモッツァレラの仕入れ先は、
たしか、サンヨーエンタープライズだった、と思います。
スパイスの記事でも書いたのですが、
サンヨーエンタープライズは、イタリア食材を扱う、小さな商社さんです。
新米の頃のぼくを、丁寧に扱ってくださった、
社長ご夫妻の記憶が、いまも残っています。
あの生モッツァレラも、あの記憶の中に、たしかに、あります。
ちなみに、今のサンヨーさんでは、フレッシュのブッファラは人気で在庫切れが続いていますが、
「トレッチェ・ディ・ブッファラ」という、朝一度だけ絞った濃厚なミルクで作る三つ編み状のブッファラを、予約で受け付けています。
機会があれば、ぜひ。

サンダニエーレの生ハムも、サンヨーさんから
同じ頃、初めて口にしたのが、
サンダニエーレの生ハム、いわゆる「プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ」でした。
これも、サンヨーエンタープライズから仕入れていました。
サンダニエーレは、イタリア北東部・フリウリ地方の、生ハムの名産地。
パルマ産の生ハムと並んで、二大生ハムとして知られています。
パルマよりも、少しだけ甘みがあって、しっとりしている、というのが、ぼくの印象です。
薄く切って、そのまま食べる。
それだけで、ワインが、いくらでも飲めます。

ゴルゴンゾーラの、衝撃

そして、ゴルゴンゾーラ。
あの、カビの生えたチーズが、こんなに美味しい、と知ったのも、この頃です。
初めて口にしたときは、少しびっくりしましたが、
食べれば食べるほど、癖になる。
そのままでも美味しい。
はちみつをかけると、また、まったく違う顔になる。
そして、忘れられないのが、
ペンネ・ゴルゴンゾーラでした。
茹でたペンネに、ゴルゴンゾーラと生クリームで作ったソースを絡めて、
最後に、パルミジャーノを削って仕上げる。
その一皿を、初めて食べたとき、
「こんな料理があるのか」と、ほんとうに衝撃を受けたのを、覚えています。
ゴルゴンゾーラには、
やさしい甘みのある「ドルチェ」と、
辛口でパンチの効いた「ピッカンテ」の二種類があります。
ぼく個人の好みで言えば、おすすめは、ピッカンテです。
青カビのピリッとした刺激と、コクの深さが、ぜんぜん違う。
ただ、家庭で使いやすいのは、やっぱり、ドルチェかなと思います。
やさしい甘みで、青カビが初めての人でも、すっと入れる。
はちみつとの相性も、ドルチェのほうが素直です。
まずはドルチェから。
ハマったら、ピッカンテへ。
そんな順番が、いいかもしれません。
賄いから、発注、そしてワイン担当へ
そのうち、賄い担当になり、
発注担当になり、
ワインのことを任されるようになり。
ひとつずつ、少しずつ、任される仕事が広がっていきました。

未経験のぼくを、雇ってくれたオーナーシェフには、
今でも、感謝しています。
そこで学んだこと、覚えたことが、
今のぼくの、料理人としての、いちばん根っこにあります。
ローマ人から教わった、ペコリーノ・ロマーノ

そのお店を卒業して、少し経った頃。
あるローマ人から教わったのが、
ペコリーノ・ロマーノというチーズでした。
これは、羊のミルクで作った、ローマの伝統的なチーズです。
(”Pecora” が、イタリア語で「羊」の意味。)
牛乳のチーズよりも、少しだけ塩気が強く、独特のクセがあります。
最初は、そのクセに戸惑うかもしれません。
でも、慣れると、これがとても美味しい。
そして、彼が教えてくれたのが、
カーチョ・エ・ペペという料理でした。
カーチョ・エ・ペペ ─ シンプルの、極み
カーチョ・エ・ペペ(Cacio e Pepe)。
イタリア語で「チーズと胡椒」という意味です。
茹で上がったパスタに、削りたてのペコリーノ・ロマーノと、黒胡椒を、絡める。
それだけの、料理です。
信じられないくらいシンプルなのに、
これが、ものすごく美味しかった。
パスタの茹で汁で、チーズをうまく乳化させて、とろりと絡める。
シンプルなだけに、技術がそのまま出る料理でもあります。
チーズと胡椒だけで、こんなに美味しいのかと。イタリア料理の「引き算」を教わった一皿です。
ローマの伝統では、パルミジャーノを混ぜるのは邪道とされ、
ペコリーノ・ロマーノ 100% で作るのが本式です。
本物のカルボナーラと、答えられなかった質問
そのローマ人から教わったことで、もうひとつ、忘れられない話があります。
本場ローマの、カルボナーラの話です。
日本では、カルボナーラに、生クリームを入れることが多いですよね。
でも、本場ローマのカルボナーラに入るのは、
以上、です。

「なんでクリームを入れるんだい?」
そう聞かれたぼくは、うまく、答えることができませんでした。
彼は、こうも言っていました。
カルボナーラは、その名のとおり、炭鉱夫(カルボナイオ)などの、肉体労働者が食べるもの。
だから、カロリーが、大事なんだ、と。
料理の名前の後ろには、それを食べてきた人たちの、暮らしがある。
そのことを、教わった気がします。
カチョカヴァロ・アフミカート、燻製の衝撃

カチョカヴァロ・アフミカートを知ったのも、この頃です。
カチョカヴァロは、南イタリアの、紐で吊るして熟成させる、紡糸チーズ。
その名前は、”cacio a cavallo”(馬に乗ったチーズ)から来ていると言われます。
たしかに、2つのチーズが紐でつながれて吊るされている姿は、馬に振り分け荷物を乗せたようにも見える。
アフミカートは、それを「燻製にしたもの」。
チーズを燻製にする、という発想が、当時のぼくには、まったくなかった。
初めて口にしたとき、
チーズの香りに、ふわっと薫香が重なって、
「なんて美味しいんだろう」と、素直に感動しました。
薄く切って、そのままつまんでもいい。
軽くフライパンで炙ると、また香りが立ちます。
余談:赤ワインをコーラで割ると、美味しい
ぜんぜん、チーズと関係ない話なのですが。
そのローマ人が、教えてくれたことで、もうひとつ。
「赤ワインを、コーラで割ると、美味しいよ。」
え?と思いますよね。
でも、これが、本当に美味しいんです。
スペインの「カリモーチョ」という飲み方が有名ですが、
イタリアでも、こういう飲み方をする人がいるらしい。
やったことのない人は、ぜひ、一度お試しを。
安い赤ワインでも、驚くほど飲みやすく、甘くなります。
ナポリピッツァの店で、水牛のモッツァレラ

その後、勤めることになった、ナポリピッツァのお店で出会ったのが、
モッツァレラ・ディ・ブーファラでした。
これは、水牛のミルクで作られる、モッツァレラです。
牛乳のモッツァレラとは、また、まったく違う。
希少なぶん、値段は高い。
でも、それだけの価値がある、独特のコクと風味がありました。
一口食べて、一瞬で、とりこになりました。

マルゲリータには、本場ナポリでは、モッツァレラ・ディ・ブーファラを使うことが、ひとつの正解とされています。
(もちろん、牛乳のモッツァレラで作るマルゲリータも、正式なDOP規格にありますが。)
(マルゲリータとオレガノの話は、スパイスの記事にも少し書きました。)
ルーチョと、ブッラータの出会いは、同時だった
そして、ブッラータ。
このチーズは、ちょっと、特殊な出会い方をしました。
スパイスの記事にも登場した、シチリアの食材を輸入している、ルーチョ。
彼との出会いと、ブッラータとの出会いは、じつは、同じ場所での、同時の出来事でした。
あの日、たまたま同じ場所に居合わせて、ルーチョと話しはじめました。
気がつくと、ぼくの隣に座っていた人が、じつはルーチョの奥さんだ、と分かって。
年もぼくと近くて、なんだか関西弁だな、と思っていたら、
なんと、ぼくと同郷でした。
そこから、また、さらに話が盛り上がって、
ルーチョとも、あっという間に打ち解けました。
そのとき、テーブルに出されたのが、ブッラータでした。
ブッラータは、モッツァレラを袋のように成形して、
中に、モッツァレラをほぐしたものと、生クリームを詰めたチーズ。
切ると、なかから、とろりと、白いクリームが流れ出します。

ものすごく、美味しかった。
しかも、それは、イタリア産ではなく、日本で作られたものでした。

東京・渋谷にある、「チーズスタンド」というメーカーが作ったもの。
今でこそ、フレッシュチーズの専門店として、すっかり有名なお店になりましたが、
当時のぼくは、その存在を、まだ知らなかった。
じつは、あの日。
その話の輪の中には、チーズスタンドの代表・藤川さんも、いました。
そして、あとで分かったことですが、
藤川さんは、ぼくの高校の同級生と、大学が一緒で、
しかも、イタリア修行の時期まで、同じだった。
世界って、狭いんです。
この記事に登場したチーズ、一覧
| チーズ | ミルク | ぼくの使い方 |
|---|---|---|
| パルミジャーノ・レッジャーノ | 牛 | 仕上げに削る。パスタビアンカ |
| グラナ・パダーノ | 牛 | 詰め物・混ぜ物の中に |
| リコッタ | 牛(ホエイ) | 家でも作れる。ラヴィオリ、デザート |
| モッツァレラ | 牛 | カプレーゼ、ピッツァ |
| モッツァレラ・ディ・ブーファラ | 水牛 | そのまま。特別な日のカプレーゼ |
| ゴルゴンゾーラ | 牛 | ペンネ、はちみつと。家庭はドルチェ、好みはピッカンテ |
| ペコリーノ・ロマーノ | 羊 | カーチョ・エ・ペペ、カルボナーラ |
| カチョカヴァロ・アフミカート | 牛 | そのまま、軽く炙って |
| ブッラータ | 牛+生クリーム | 切って、流れ出るクリームごと |
家庭で、まず持っておきたい4つのチーズ
ここまで、いろんなチーズの話をしてきましたが、
最後に、家庭で、まず持っておくならこの4つ、というものを挙げておきます。
これは、ぼくが実際に、家でも常備しているチーズです。
(もちろん、粉チーズやスライスチーズではなく、の話です。)
1. パルミジャーノ・レッジャーノ
削れば、ふだんのパスタが、別物になります。
仕上げの一撃、として、まずこれ。ブロックで買って、直前に削るのが基本。
2. ペコリーノ・ロマーノ
パルミジャーノとは、また違う世界を教えてくれる、羊乳のチーズ。
カーチョ・エ・ペペや、カルボナーラの本場の味を、家で試したくなったときに。
3. モッツァレラ(クラフト以外の、できれば水牛のもの)
カプレーゼ、マルゲリータ、そのままオリーブオイルと塩で。
(合わせるオリーブオイルの選び方はこちらに。)
ここは、少しだけ贅沢しても、後悔しません。
4. ゴルゴンゾーラ・ドルチェ
そのまま、はちみつをかけて。
ペンネ・ゴルゴンゾーラのソースにして。
家庭で使いやすいのは、ドルチェ。(ぼく個人の好みは、ピッカンテですが。)
100gあれば、家庭では十分。
まとめ ─ 9つの出会いを、ふりかえって
こうして書き出してみると、
ぼくの料理人としての階段には、そのたびに、あたらしいチーズが、待っていてくれた気がします。
クラフトの粉から始まって、
パルミジャーノ、リコッタ、生モッツァレラ、ゴルゴンゾーラ、
ペコリーノ、カチョカヴァロ、水牛のモッツァレラ、ブッラータ。
その一つひとつが、ぼくの料理の世界を、少しずつ、広げてくれた。
溶かして、ソースや煮込みに。
そのまま、ワインの相棒に。
そして、家でも、作れるものは作ってみる。
チーズは、ぼくの料理の世界を、たしかに、広げてくれました。
それは、ぼくが、20年をかけて、少しずつ、教えてもらったことです。
今日、この記事を読んでくれたどなたかにも、
何かひとつ、あたらしい出会いがあれば、うれしいです。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、おやすみなさい。
今日の一曲
今日の一曲は、正直、悩みました。
候補のひとつは、最初の店で、いつも流れていたカンツォーネ。
でも、この記事の締めくくりは、やっぱり、この曲しかありませんでした。
カーチョ・エ・ペペと、本物のカルボナーラを教えてくれた、あのローマ人。
彼が知っている、唯一の日本の歌が、ポニョでした。
日本人のお客様が来ると、彼は、陽気に歌うんです。
「ポッリポッリ ナナナナナナナ」と。
お客様は、みんな、笑っていました。
ポッリ(polli)は、イタリア語で「鶏」。
彼はもしかして、あれを、鶏の歌だと思っていたのかな。笑
本物のカルボナーラを教えてくれた人が、
ポニョを、鶏の歌として、歌っていた。
そういう、ぜんぶをひっくるめて、
ぼくの、チーズの記憶です。

