何にもない。でも、何でもある。
こんばんは、ひろしです。
今日は、一皿の料理の話をします。
奥出雲産猪のコトレッタ。

島根に来たとき、何にもないと思った
僕はもともと大阪の人間です。
島根に来たばかりのころ、正直に言うと、こう思っていました。
何にもないな、と。
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人が少ない。店が少ない。都会のような品揃えもない。
僕は写真が好きです。カメラは、そのための道具です。
その道具を選ぼうにも、カメラ屋に行って実際に触れる機種は、ほとんどありません。買うならネットで、現物を見ずに決めることになります。
料理人としても、そうでした。休みの日に、勉強を兼ねてイタリア料理を食べに行こうと思って探すんです。でも、雲南市のあたりには、ほとんどありませんでした。
都会の便利さや選択肢という意味では、たしかに何にもない。
都会から地方を見る目って、だいたいこんな感じだと思います。僕もそうでした。

料理人の目で見はじめてから
ところが、料理人として島根を見ていくと、まったく違う景色になりました。
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海があります。山があります。川があります。
野菜を作っている人がいます。山菜があります。野草があります。きれいな川と海に、魚がいます。
肉もあります。鶏、豚、牛。猪や鹿のジビエもあります。
小麦もあります。塩もあります。醤油もあります。菜種油も、胡麻油もあります。量は少なくて貴重ですが、島根県産のオリーブオイルまであります。
チーズもあります。
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食材だけではありません。
島根には陶芸をしている人がたくさんいて、島根で作られた器があります。ガラスの作家もいます。
そして、探していくと、キャビアまであります。チョウザメを養殖してキャビアを作っているところがあるんです。僕も使って料理をしたことがあります。養殖場にはまだ行けていないので、これはまた別の機会に書きます。
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そのうちに、僕の中でこうなりました。
島根には、何にもない。でも、何でもある。
探していくうちに、増えていった
島根に来てから、以前勤めていたワイナリーでシェフをしていたころから、地元で採れる野菜や魚や山菜を中心に料理を組み立てていました。
最初は、食材を探すところから始まりました。
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探していくにつれて、増えていくんです。
これも島根にある。これも作っている人がいる。
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その積み重ねの先に、この一皿があります。
最初から「島根県産だけで作るぞ」と決めて作ったわけではありません。
作ってから、気づいたんです。
よく考えたら、この一皿、全部島根のもので作れるやん、と。
使ったもの
猪肉は、奥出雲のカヌカパーク。猟師さんが獲った猪を、鮮度の高いうちに処理しています。
塩は、二種類使いました。
仕上げの塩は、浜田の浜守の塩。以前、塩の記事でも書きました。
塩の記事【ゲランドを超える、島根の塩】料理人が使い分けてきた、塩5種
肉の下味には、ハーブソルトを使っています。鷺浦の藻塩に、出雲クオーレさんのハーブを混ぜたもの。藻塩は、阿部さんがつくっています。
小麦粉は、安来のえーひだファーム。中力粉くらいの粉です。試験的に分けてもらっていたものでした。
卵は、雲南市三刀屋町の山奥にある、佐藤のんびり農園。輸入の飼料を使わず、地元の酒蔵や米屋、豆腐屋から手に入れた米やおからを食べて育った鶏の卵です。
パン粉は、出雲のパン屋「パンと焼き菓子」のパンから。とても好きなパン屋です。
揚げ油は、影山製油所の菜種油。
ソースは、赤ワインで作りました。奥出雲葡萄園の小公子。僕が以前、シェフをしていたワイナリーのワインです。
チーズは、木次乳業のオールドゴーダ。一年以上熟成させたチーズです。値は張りますが、本当においしい。料理によっては、パルミジャーノ・レッジャーノの代わりが務まるくらいの力があると思っています。薄く削って、添えました。
付け合わせのかぶ、にんじん、ラディッキオは、グッドライフファーム。ここの野菜が、本当においしいんです。
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そして、器。
邑南町の森脇製陶所です。
器の話
森脇さんとは、長く話をしたことがあります。
年齢が近いこともあって、ものを作ることについて、共感するところが多い人でした。
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森脇さんも、作りはじめたころはいろいろ試したそうです。
模様をつける。色を派手にする。金や銀を使ってみる。
そういうことをひと通りやった末に、最終的には自然でシンプルな形に落ち着いていった。
いまの器に模様のように残っているものは、模様として描いたものではなくて、森脇さん自身の手の跡だったりします。
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これは、僕の料理の変化と重なります。
僕も以前は、料理にいろいろなものを足して、複雑にしていた時期がありました。
そこから、だんだん引くようになりました。
足すことより、引くことのほうが難しい。
余計なものを削りながら、料理もシンプルになっていきました。
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だからこの器を選んだのは、島根で作られているから、というだけではありません。
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ちなみに、森脇さんの器は釉薬も島根です。白は益田の長石、茶は出雲の来待石。
土も、島根のものを使っています。
一皿の向こう側
猪は奥出雲。仕上げの塩は浜田、下味の藻塩は鷺浦。小麦は安来。卵は三刀屋。パンは出雲。油は影山製油所。ソースのワインは奥出雲葡萄園。チーズは木次乳業。野菜はグッドライフファーム。器は邑南町。
こうやって並べてみると、島根の地図みたいになります。
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もうひとつ。
この猪肉だけは、探して見つけたものではありませんでした。
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カヌカパークの鹿糠さんは、もともと、うちの店にアルバイトに来ていた人です。
島根に移住してきて、農家で働いていました。ただ、その働き方だと時間が余る。もう少し収入がほしいということで、うちで働くことになりました。
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その勤め先が、猪の解体と販売もやっていたんです。
鹿糠さんはそこから独立して、いまは猪肉の販売と、イベントへの出店を中心にやっています。
この土地で飲食店に人を呼び続けるのは、本当に難しい。いい判断だと思います。
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うちで働いていた人の猪を、うちの店で使うようになった。
探しにいかなくても、向こうから来ることもあります。
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僕が島根に来て変わったのは、たぶん土地のほうではありません。
僕の目のほうです。
ないと思っていたのではなく、まだ見つけていなかっただけでした。
いまも
この一皿は、La Feniceとして独立してからの料理です。
いまもケータリングで料理を作っています。先日も、古民家に泊まっているお客さまのところで一晩の料理を作ってきました。
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都会には都会の便利さがあります。島根には、実際に不便なところもあります。
そのうえで言います。
何にもない。でも、何でもある。
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自分の周りを、ちゃんと探してみたことがあるかどうか。
たぶん、それだけの違いです。
この一皿をつくった人たち
この記事に出てきた作り手さんです。ほとんどの方が、Instagramをやっています。
どんな人が、どんなふうに作っているのか。そこに全部載っています。料理の写真より、こっちのほうが面白いかもしれません。
下味に使った鷺浦の藻塩をつくっている阿部さんは、アカウントが見つかりませんでした。あの塩は、いろんなお店で使われています。
今日の1曲
今日の一曲は、YUKAさんの「お料理行進曲」。キテレツ大百科のオープニングです。
僕は、キテレツ大百科が大好きです。
キテレツは、アイデアを出して、何でも自分で作ってしまいます。
そして最初の発明が、助手兼料理番のロボット、コロ助だったところも好きです。
いちばん最初に作ったのが、料理番。
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探して、なければ、自分で作る。
この記事で書いてきたことと、どこかでつながっている気がします。
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ちなみにこの歌は、コロッケの歌です。この記事の一皿は、コトレッタ。
パン粉をつけて揚げるところまでは、親戚なんですけど(笑)
いざ進めやキッチン
目指すはジャガイモ
茹でたら皮をむいて
グニグニとつぶせさあ、気を出し
みじん切りだ包丁
タマネギ目にしみても
涙こらえて炒めよう!ミンチ、塩、コショウで
混ぜたならポテト丸く握れ
小麦粉と卵にパン粉をまぶして
揚げればコロッケだよキャベツはどうした?
まだまだあるメニュー
鍋の熱いプール
スパゲッティ泳がせたら
ザルにあげてOK手にかざせ包丁
タマネギ、ピーマン、パン
輝くフライパンでダンス踊るよ
炒めよう!軽く、塩、コショウで
忘れるなスパゲッティ
ケチャップ混ぜてウットリするママもう
我が家のシェフ
食べればペロリヤーナ
赤いナポリタンYUKA「お料理行進曲」(作詞 森雪之丞/作曲 平間あきひこ)より
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、おやすみなさい。
