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こんばんは、ひろしです。

今日は、料理用の温度計の話をします。

レシピにはよく「中火で5分」と書いてあります。でも、その5分は、鍋の温度がそろっていて初めて意味を持ちます。

コンロの火力も、鍋の厚みも、食材の冷たさも、家ごとに違う。温度が違えば、同じ5分は、別の5分です。

食中毒を防ぐ目安も、「75℃で1分以上」。温度と時間は、いつもセットで語られます。

だから僕は、時間の前に、温度を測ります。「何度で、何分」。そのための道具が、温度計です。

― 先に、結論だけ ―

いちばんのおすすめは、耐熱プローブ+アラーム式。刺したままオーブンに入れられて、設定温度になったら知らせてくれます。

→ 3タイプの使い分けと、おすすめはこの先で

温度計は、大きく3タイプ

料理用の温度計は、ざっくり3つに分かれます。

  • 非接触の赤外線温度計 ― 表面の温度を、離れたまま測る
  • プローブ式の芯温計 ― 刺して、中の温度を測る
  • 耐熱プローブ+アラーム式 ― 刺したまま加熱して、狙いの温度で知らせてくれる

順番に、僕がどう使ってきたかを話します。

赤外線温度計 ― 触れないものを、測る

トリガーを引くと光が当たって、表面の温度が出る。あれです。

僕が使っているのは、TemPro 900というモデル。マイナス50℃から900℃まで測れます。

赤外線温度計 TemPro 900
TemPro 900。ハードケース入りです

これを使ってきたのは、普通の温度計では測れない場面でした。

ナポリピッツァの石窯。炭火の火力。そして、鉄フライパンの手入れです。

鉄のフライパンは、洗ったあと火にかけて、完全に乾かしてから油を塗ります。

このタイミングを、感覚ではなく温度で判断できる。ここが赤外線の良いところです。

窯にも、炭にも、フライパンにも、温度計を突き刺すわけにはいきません。触れないものを測る道具として、一台あると世界が変わります。

TemPro 900の測定レンズ側

先端の黒い窓で、表面から出る赤外線を受け取って測ります

では、何度を目安にすればいいのか。この記事のために、あらためて調べ直しました。

鉄フライパンの手入れ、温度の目安

  • 乾かす ― 水は100℃で飛びますが、鉄の表面に張りついた薄い水分は、それより上まで温めないと離れません。表面のどこを測っても120〜150℃あれば、乾き切っています
  • 油を塗る150〜200℃のあいだ、温かいうちに薄く。170〜200℃は、油が鉄になじんで膜になる反応が進みやすい温度帯です
  • 煙が出るまで(200〜230℃)は、油ならしの領域。膜は強くなりますが、毎回の手入れでそこまで上げる必要はありません

感覚で言えば、「水気を飛ばして、うっすら煙が上がる手前で、薄く塗る」。僕は長いことそうやってきましたし、それで問題ありませんでした。数字は、その感覚が合っているかを確かめるためのものです。

ひとつだけ注意を。赤外線温度計は、表面の色や光り方で数字が少し変わります。黒くなじんだ鉄なら問題ありませんが、磨きたての銀色の面は、実際より低く出ることがあります。

鉄フライパンの手入れの話フライパンの選び方|料理人が現場で使い分けてきた、アルミ・鉄・ステンレス・テフロン

プローブ式の芯温計 ― いちばん長く使ってきた

先端の細い針を刺して、中の温度を測るタイプです。

僕がいちばん長く、いちばんよく使ってきたのはこれでした。

肉や魚の中心温度。出汁を引くときの液温。仕込み全般。

長く使っていたのはTANITAのコンパクトなものです。不満は、ありませんでした。自宅にも置いて、ケータリングには必ず持って行きます。

耐熱プローブ+アラーム式 ― いまの、いちばんのおすすめ

最近買って、いちばんのおすすめになったのがこれです。

本体とプローブがコードでつながっていて、そのコード自体が耐熱になっている。

つまり、魚に刺したまま、オーブンに入れられるんです。魚焼きグリルでも、炭火の近くでも使えます。

耐熱プローブ+アラーム式温度計の仕組み:肉に刺したままオーブンへ、コードは耐熱で扉のすき間を通り、設定温度で知らせてくれる。そのあいだ手は別の仕込みへ

僕が使っているのは、ThermoProのTP-16というモデルです。2千円ちょっとでした。

そして、最大の強みがアラームです。

設定した温度に達すると、音で知らせてくれる。

ケータリングの仕込みをひとりでやっていると、いくつもの作業が同時に進みます。鍋もオーブンも、ずっと見てはいられません。

「この温度になったら教えて」と設定しておけば、別の作業をしていても、鳴った時点で火加減を調整すればいい。肉や魚は刺したまま加熱して、狙った芯温で取り出せばいい。

仕込みのあいだ、自分の目の代わりになってくれる相棒です。

正直に言うと、この記事を書いていて、いちばん驚いているのは僕かもしれません。

ケータリングの仕込みから本番まで、僕の目の代わりになって働いてくれた道具が、2千円ちょっと。2万円と言われても、迷わず買います。それくらいの活躍でした。精度も、問題ありませんでした。

本体と測る部分が分かれた芯温計は、これまでも使ってきました。ただ、コードの耐熱性がいつも疑問で、値段も決して安くはなかった。今回のは、つくりがシンプルで、まだ数回使った程度ですが、熱にも強そうです。

耐久性だけは、これからの評価です。いちばん困るのは、大事な場面でいきなり壊れること。そこは使い続けて確かめて、何かあれば、この記事に正直に追記します。

僕は仕事で、65万円の機械も、9千円の機械も使ってきました。値段と価値は、比例しないことがある。この温度計は、それをあらためて教えてくれた一台です。

ひろし

温度計に「見ておいてもらう」あいだに、僕は別の仕込みができる。ワンオペの厨房では、これが本当に大きいんです。

実際に、温度が仕事をする場面

「そんなに温度って大事?」と思う人もいると思います。僕が実際に温度計を使う場面を、いくつか挙げてみます。

  • 出汁を引くとき ― 昆布は沸かさない。温度帯を守るだけで、味が変わります
  • 揚げ物 ― 油の温度で、衣の仕上がりが決まります
  • 肉のロースト ― 焼き時間ではなく、中心温度で取り出します
  • 鉄フライパンの手入れ ― 乾き切ったことを、温度で確かめます

先日のケータリングでも、和牛のほほ肉の低温調理は、芯温を測りながら仕上げました。

低温調理は、温度と時間の管理がそのまま安全に直結する世界です。ここはいつか、一本の記事にして丁寧に書きます。

ここまで書いておいて、なんですが。僕は、温度計がなくても仕事はできます。

肉も焼けるし、魚も焼けるし、出汁も引ける。長くやってきた経験からの、感覚です。電池が切れても、壊れても、そのときはそのときで対応できます。ブレも、そんなにはありません。

でもそれは、これまでの経験があってのこと。一般的には、温度と時間で管理するのが、いちばん間違いのないやり方だと思っています。

そして今回の記事でいちばん伝えたいのは、そこではありません。僕の助手として働いてくれる温度計があった、ということです。

刺しておけば、見ていてくれる。鳴ったら、行けばいい。低温調理器もそうですが、僕の手を空けてくれる道具は、本当に助かります。

パスタ鍋の記事で、道具にこだわることと、依存することは別だと書きました。温度計も同じです。依存ではなく、使いよう。

「こだわる」と「依存する」は別、の話パスタ鍋は、なくても大丈夫|料理人が家庭で使っている鍋と、茹で方

おすすめするなら、どれか

1台だけ選ぶなら、まずはプローブ式の芯温計です。使う場面が、いちばん多いので。

そのうえで、いちばんのおすすめは、耐熱プローブ+アラーム式。芯温計にできることは、だいたいこれでもできて、そのうえで「見ていなくていい」が加わります。

石窯や炭火をやる人、鉄フライパンを育てている人は、赤外線も一台あると便利です。

この記事で紹介したもの

この記事に出てきたものを、まとめておきます。
押すと、その説明のところまで戻ります。買うところではなく、まず説明を読んでもらえたらうれしいです。

まとめ

大事なのは、「何分」でも「何度」でもなく、「何度で、何分」。

レシピの「中火で5分」がうまくいかないのは、腕のせいではなくて、温度がそろっていないだけかもしれません。

温度計は、数千円の道具です。でも「なんとなく」を「確かめた」に変えてくれる。

料理の再現性が、たぶんいちばん安く手に入る道具だと思います。

桜の咲く橋を、手をつないで渡る兄弟の後ろ姿
2024年4月、桜の季節の橋で

今日の1曲

今日の一曲は、Ben E. Kingの「Stand By Me」

そばにいてくれるだけでいい、という歌です。

刺しておけば、見ていてくれる。鳴ったら、行けばいい。仕込みのあいだ、僕のそばに立っていてくれた小さな相棒のことを思って、この曲にしました。

1961年の歌が、2千円ちょっとの温度計に、ちゃんと届く。歌というのは、そういうものだと思います。

When the night has come And the land is dark
And the moon is the only light we’ll see
No, I won’t be afraid Oh, I won’t be afraid
Just as long as you stand
Stand by me
So darlin’, darlin’, stand by me Oh, stand by me
Oh, stand
Stand by me, stand by me

Ben E. King「Stand By Me」(作詞・作曲 Ben E. King, Jerry Leiber, Mike Stoller)より

本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、おやすみなさい。