きのこ風なのに、きのこが入らない|ナスのフンゲッティ、料理人の分量と作り方
こんばんは、ひろしです。
今日は、ナスの料理です。
メランザーネ・ア・フンゲッティ。

アンチョビの記事で、アンチョビとケッパーの話を書きました。
そのふたつを使う、ナポリの一皿です。
結論から言うと。
ナスは、皮をむかずに、きつね色に揚げる。
揚げたら、酢を少し入れたお湯に、さっとくぐらせる。
ソースは、ケッパーの酸味が飛ぶまで炒めてから、トマト。
そして、熱いうちに合わせる。
説明していきます。
― 先に、結論だけ ―
揚げて、くぐらせて、熱いうちに合わせる。
押すと、その説明に飛びます。

「きのこ風」なのに、きのこは入らない
フンゲッティは、イタリア語で「小さなきのこ」。
メランザーネは、ナスのことです。
つまり、「ナスの、きのこ風」。
でも、この料理に、きのこは入りません。

僕がこの料理を覚えたのは、ラ・スカーラという店の、料理教室の映像からでした。
そのなかで、五十嵐シェフが、名前のことをこう話していました。
昔は、きのこの料理だった。
でも、きのこは季節のもの。いつでもあるわけじゃない。
それでも、この料理が食べたい。
そこでナポリの人が、手に入りやすいナスで作った。
名前だけが残って、いまはフンゲッティといえば、ナスの料理。
2011年4月の料理教室の映像から。言葉は、短くまとめています。

イタリアの料理のサイトを見ると、もうひとつ、よく書かれている説明があります。
角切りにして火を入れたナスが、小さなきのこのソテーのように見えるから。
どちらが本当かは、わかりません。
でも、どちらの話でも、きのこは入らない。
材料を見ると、パスタのプッタネスカと、ほとんど同じです。
トマト、オリーブ、ケッパー、アンチョビ、にんにく、唐辛子。
プッタネスカも、ナポリのあたりで生まれたと言われる料理です。
同じ土地の、同じ顔ぶれ。
「ナスのプッタネスカ」と思ってもらうと、味の想像がつきやすいかもしれません。
寄り道|プッタネスカは、いつから?
プッタネスカという名前が本に出てくるのは、1961年の小説が最初だと言われています。
でも、オリーブとケッパーとアンチョビで作るパスタは、1844年にナポリで出た料理の本に、もう載っています。
名前より先に、味があった。
そういう料理なのかもしれません。
分量(ナス4〜5本ぶん)

家で作る分量(2〜3人分)
ナス
- ナス 4〜5本(約400g)
- 揚げ油 適量
- 酢 大さじ1くらい(ナスをくぐらせるお湯2Lに。種類は何でも)
ソース
- オリーブオイル 大さじ1
- にんにく 2かけ(約10g)
- 赤唐辛子 1本
- 黒オリーブ(種なし) 5粒(約15g)
- ケッパー 小さじ2(約6g)
- アンチョビ 1枚
- バジル 1〜2枚
- オレガノ(乾燥) 少々
- トマト缶(つぶしたもの) 100g
- 塩 ひとつまみ
- 赤ワインビネガー 少し(仕上げに、必要なら)
※塩はひとつまみ。塩気は、アンチョビがつくる。
店では、ナス8kgで仕込んでいました。
家の量は、その20分の1です。
トマトは、店ではピッツァ用のトマトソースを使っていました。
家なら、トマト缶をつぶしたもので大丈夫です。
寄り道|店のレシピカードの分量(ナス8kg)
- なす 8kg
- にんにく 200g
- オリーブオイル 300cc
- 唐辛子 15本
- ケッパー 1瓶(長細い瓶)
- 黒オリーブ 1.5缶(4号缶)
- バジリコ 大10枚
- ピッツァ用のトマトソース 2kg
- オレガノ 適量
- 塩 15g
- アンチョビ 50g
ケッパーとオリーブは、ロボクープ(業務用のフードプロセッサー)で刻んでいました。
家の分量は、これを20分の1にして、家で作りやすい量に丸めたものです。
作り方

ソースとナス、ふたつを並べて進めます。
はじめに、オリーブは5mm角くらい、ケッパーは粗めに、アンチョビは細かく刻んでおきます。
ソース
- フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて、しっかり香りを出す
- 温度を上げて、唐辛子を入れる
- 唐辛子が色づいて香りが出たら、オリーブ、ケッパー、アンチョビを入れて炒める
- 途中で、バジルとオレガノを加える
- ケッパーの酸味が飛ぶまで、しっかり火を入れる
- トマトを入れて、煮詰める。鍋底に張り付いてきたら、木べらではがしながら、水分をぎりぎりまで飛ばす
- 水を少し足してのばし、塩で味をととのえる
ナス
- ヘタを取る。皮は、むかない
- 一口大の乱切りにする。角切りでも、半月切りでもいい
- 少し高めの温度の油で、しっかりきつね色になるまで揚げる。一度にたくさん入れない
- 別の鍋にお湯を沸かして酢を入れ(お湯2Lに大さじ1くらい)、揚げたナスを、さっとくぐらせる
合わせる
ソースとナスが熱いうちに、さっと合わせます。
味を見て、酸味が弱ければ、赤ワインビネガーを少し。
コツは、皮と、酢の湯
家では、皮をむかない
家で作るなら、皮は、むきません。
作って、すぐ食べるからです。
それに、皮があるほうが、揚げたときにくずれにくい。
皮が、ナスの形を支えてくれます。
皮をむくのは、店で、長く置くときの話。
時間がたつと、皮の色がトマトに出て、ソースがくすんでしまう。
家で、どうしても色が気になるなら、しましまに。
ピーラーで、むくところと、むかないところを交互に。
紫が残って、形も残ります。
揚げて、酢の湯へ
ナスは、炒めると、くしゃっとなってしまいます。
だから、揚げる。
五十嵐シェフも、教室でそう話していました。
切り方は、一口大の乱切り。
角切りでも、半月切りでもかまいません。
油の温度は、少し高めに。
しっかり、きつね色になるまで揚げます。
一度にたくさん入れると、油の温度が下がって、長く揚げることになります。
少しずつ、何回かに分けて。
ただ、揚げたナスは、油が切れにくい。
そこで、酢を少し入れたお湯に、さっとくぐらせます。
お湯2リットルに、酢は大さじ1くらい。種類は、何でもかまいません。

中華の料理人が、油通しのあとに熱いスープをかけて油を切るのと、同じ考え方だそうです。
お湯に酢をほんの少し入れると、皮の色も、さらによくなる。
これも、五十嵐シェフに教わったことです。
酸味は、飛ばしてから、足す
ケッパーは、酢漬けを使っていました。
そのとがった酸味が飛ぶまで、しっかり炒めてから、トマトを入れます。
そして最後に味を見て、酸味が足りなければ、赤ワインビネガーを少し。
一度飛ばして、必要な分だけ、あとから足す。
そういう順番です。
トマトは、鍋に張り付くまで
トマトを入れたら、煮詰めていきます。
水分が抜けてくると、トマトが鍋の底に張り付くような濃さになってきます。
それを木べらで、はがしながら、はがしながら。
水分を、ぎりぎりまで飛ばします。

そうすると、トマトの甘みが増して、ソースに深みが出ます。
そこから水を少し足して、ちょうどいい濃さにのばします。
ソースとナスは、熱いうちに合わせます。
そのほうが、ソースがよくなじみます。
「何これ、全然違うやん」
この料理には、思い出があります。
ピソリーノで働いていたころの話です。
ナポリピッツァの店で、石川と富山に4つの店がありました。
ある日、金沢の別の店のアルバイトの子たちから、声があがりました。
ブッフェに出している、この料理のことでした。

その店の料理長は、ナスの皮を全部むいて作っていました。
たぶん、その前に、ブッフェ台で皮の色が出すぎていたことがあって、「むいたほうがいい」と助言があったんだと思います。
それで、全部むいた。
まちがいでは、ありません。
ただ、白っぽくなったナスは、揚げるとくずれやすくて、ブッフェの上では、少しさびしく見えていました。
それがきっかけのひとつになって、僕はその店に、料理長として移ることになりました。
そのころの僕は、まだラ・スカーラに教わりに行けていませんでした。
教室の様子は、社長が毎回ビデオに撮っていて、DVDになっていました。
それを見て、作り方を覚えました。
分量は、教室では教えていなかったので、僕が決めました。
分量は教わっていなかったけど、なぜそうするのかは、わかる気がしたんです。
ひとつひとつが大きかったので、一口大の乱切りに。
揚げ方も、変えました。
少し高めの油で、一度に入れる量を減らして、しっかりきつね色になるまで。
皮は、全部むくのでも、全部残すのでもなく、間をとって、しましまに。
皮があるほうが、くずれにくい。でも、長く置くと、色が出る。
ブッフェのための、間の取り方でした。
アルバイトの子たちも、期待してくれていました。
できあがったものを、いちばん厳しく言っていた子に、食べてもらいました。
「何これ、全然違うやん。めっちゃ美味しい」
その日から、店のみんなに、少し認めてもらえた気がします。
だから、この料理は、僕にとって思い出の一皿です。
まとめ

家では、皮はむかない。
きつね色に揚げて、酢を少し入れたお湯に、さっと。
ソースは、ケッパーの酸味が飛ぶまで炒めてから、トマト。
熱いうちに、合わせる。
きのこ風なのに、きのこは入らない。
ナポリの、ナスの一皿です。
本日もお読みいただき、ありがとうございました。
それでは、おやすみなさい。
今日の一曲

今日の一曲は、ピノ・ダニエーレ「Napule è(ナプレ・エ)」です。
ナポリの言葉で、「ナポリは」。
ナポリに生まれたピノ・ダニエーレが、1977年の最初のアルバムに入れた歌です。
動画は、ピノ・ダニエーレ公式(Topic)の音源です。
















