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こんばんは、ひろしです。

今日は、真空パック機の話をします。

料理人になってから、5台使ってきました。修行先の備品が2台、自分で買ったのが3台。業務用も、家庭用も、両方です。

結論から言うと、いまは2台を使い分けています。

65万円の業務用と、9,000円の家庭用。

どちらが上ということではありません。使う場所が違うだけです。

説明していきます。


― 先に、結論だけ ―

家庭で1台なら、ロール式で大きめのフードセイバー。持ち運びやすさと価格なら、9,000円のBONIQ Vacuumer僕の現在の相棒 ― 業務用TOSEI TOSPACK HOT HVP-382N

どちらが上ではなく、用途が違います。→ 紹介したもの一覧へ

「あー、また帰り大変やなー」

先日、ケータリングの仕込みをしていました。

一皿ずつ、真空パックにかけていきます。汁物も、ソースも、肉も。真空にすればこぼれないし、コンパクトになる。持ち運ぶには、これがいちばんいい。

そのとき、ふと思ったんです。

あー、また帰り大変やなー、と。

ケータリングでは、必ず余ります。

持って行ったものを、きれいに使い切ることはできません。多めに作るのが当たり前だし、そうしないと足りなくなったときに取り返しがつかない。

問題は、その余りです。

一度真空パックを開けてしまうと、持って帰るのが難しい。特に汁物。ラップに包み直しても、汁は漏れます。だから以前は、用途別のポットを何個も持って行って、なんとかしていました。

そのとき、思い出したものがありました。

少し前に、低温調理器を買ったんです。そのとき、真空パック機とのセット販売がありました。

僕はこう思って、買いませんでした。

うちにはトスパックもフードセイバーもあるし、要らんわ。

でも、こうも思っていたんです。

コンパクトだなー、と。

仕込みの手を止めて、調べました。

サイズ。性能。動作音。

あれ。

これ、ケータリングの最適解やん。

値段を見て、即決しました。9,000円でした。


1台目 ― 金属のベロが、ビンッと出てくる

最初の修行先にあった業務用です。

ノズル式の業務用真空パック機のイラスト。シールバーが上がり、横に水を受けるトラップの瓶がある
ノズル式。右の瓶が、汁を受け止めるトラップです

袋をセットしてスタートを押すと、金属のベロがビンッと出てきて、袋の口を挟んで吸引する。吸い終わったら、そのままシールされる。ノズル式と呼ばれるものです。

当時は、真空パックがまだそれほど出回っていなかった頃でした。だから今の機械と比べると、性能は劣ると思います。

普通に使う分には、不満はありませんでした。

ただ、汁物が難しかった。

水分が吸引されて、金属のノズル側に上がってくるんです。

一応、途中にトラップは付いています。水を受け止める仕組みです。でも、そこに全部溜まる。掃除が大変でした。

「真空パックは汁物が難しい」

僕がそれを覚えたのは、この1台目です。


2台目 ― 蓋を閉めるだけ。でも

次の修行先にあったのは、チャンバー式でした。

チャンバー式の業務用真空パック機のイラスト。箱型で、上に透明な蓋がついている

チャンバー式。蓋を閉めると、庫内ごと空気が抜けます

袋をセットして蓋を閉めると、あとは機械が全部やってくれる。庫内の空気ごと抜くので、袋の中と外が同じ気圧になる。だから汁物も吸い上がらない。

かなり大きいタイプでした。庫内が深いので、まな板みたいな底上げ板が付属していて、それで浅くして使っていました。

楽でした。

でも、設定が難しかった。

吸引の秒数と、シールの秒数を、自分で決めなければいけません。特にシール時間の詰め方。長すぎると袋が縮んで穴が空くし、短いと閉じきらない。

汁物の設定は、やはり手強かった。ちゃんと決まるまでは、ずっと手探りでした。

1台目と2台目で、僕は真空パック機の2つの方式を覚えました。

ノズル式と、チャンバー式。

これがそのまま、あとの選択の物差しになります。


3台目 ― 独立して、初めて自分で買った

独立するとき、自分で買いました。

本当は、本格的な業務用が欲しかった。でも資金がなかったし、しかも急いでいた。手に入れやすさで選んだ1台です。

フードセイバー(FoodSaver FSFSSL4840-000/日本ではV4880)。家庭用としては、やや大きめの部類です。

これが、良かったんです。

ロールタイプの袋を本体にセットして、好きな長さでカットする。両端が開いているので、片方を先にシールして袋を作る。そこに素材を入れて、口をセットすれば、吸引からシールまで自動で終わる。

ロール式の袋の使い方:本体にロールを内蔵し付属のカッターで切る→切り口の片方をシールすると袋になる→長い魚もまるごと入る

長さを自由に決められるのが、本当に良かった。

長い魚を、丸ごと真空にできる。既製の袋だと、これができません。

汁物モードと通常モードが選べるので、汁物モードにしておけば比較的こぼれにくい。手動吸引のボタンもあって、押した分だけ吸ってくれる。これで大抵のものは対応できました。

総じて、大きな不満はありませんでした。

ひとつを除いては。

家庭用の真空パック機は、内側が網目状になった「エンボス加工」の専用袋でないと吸引できません。網目が空気の通り道になるからです。これはほぼ全ての家庭用機に共通しています。

その網目模様が、食材に転写されるんです。

肉や魚を真空にして置いておくと、表面に網目の跡がくっきり付く。

料理人としては、これがいちばん痛かった。

真空パックしたイカの表面に、専用袋のエンボス加工の網目模様がくっきり転写されている

イカの表面。袋の網目が、そのまま移っています

あと、音がうるさい。これは正直に書いておきます。

日本ではV4880という名前で売られています。型番の書き方が違うだけで、同じ機械です。


4台目 ― 熱いまま、真空にできる

そして、いま使っているのがこれです。

TOSPACK(トスパック)。株式会社TOSEIというメーカーの、業務用のチャンバー式です。

当時、約65万円でした。

モデルは、卓上型のホットシリーズ HVP-382N。重さは49kg。意外なことに、電源は家庭と同じ100Vで動きます。

TOSPACK HOTの起動画面

起動画面。TOSPACK HOTの名前どおり、熱いものに強い機械です

現時点で、僕の中では文句なしの最強です。

強みは3つ

ひとつ。チャンバー式なので、汁物がやりやすい。

2台目で覚えたあの原理です。庫内ごと減圧するので、汁が吸い上がりません。

ふたつ。エンボス加工の袋が要らない。

ツルツルの袋が使えます。だから、食材に網目の跡が付かない。

3台目でずっと気になっていたことが、ここで解決しました。

みっつ。熱いものを、そのまま真空パックできる。

これが名前の由来であり、最大の強みです。

粗熱取りが、消えた

仕込みでいちばんしんどいのは何かと聞かれたら、僕はこう答えます。

とろみのある熱いものの、粗熱取り。

カレーとか、ポタージュとか。ああいうものは、放っておいても冷めません。

だから、こうします。鍋を、一回り大きい氷を張ったボウルに落とす。そして早く冷ますために、ゴムベラで混ぜ続ける。

これが重労働なんです。腕は疲れるし、時間もかかる。他の仕込みが止まる。

夜の厨房で、氷水を張ったボウルに鍋をあて、ゴムベラでカレーを混ぜ続けて粗熱を取る料理人
カレーは、放っておいても冷めません

TOSPACKなら、熱いまま真空パックできます。

そのままパックごと急冷に回せる。

あの混ぜ続ける作業が、まるごと消えました。

ちなみにこのホットパックという機能は、TOSEIの独自技術で、特許まで取られています(特許第5575827号)。

TOSPACKの用途選択画面

用途選択の画面。「温かいもの」に、ホットパックの大きなボタン

道具が変わると、仕事が変わる。

そういうことが、たまに起こります。

設定に悩まなくていい

2台目のように、秒数を自分で追い込む必要もありません。

あらかじめ用途別の選択肢が用意されています。汁物(さらに汁の種類別)、シール、肉、魚。それぞれに応じたメニューから選ぶだけ。

選択肢から選べば、汁物でもまず溢れません。入れすぎれば別ですが。

液体コースの設定画面

液体のコース。「吹出し防止」「シールのみ」まで用意されています

参考までに、いま新品を買うと80万円台からのようです。僕が買ったころより、上がっています。買う人はほとんどいないと思いますが、「業務用っていくらするんだろう」の答えとして置いておきます。


5台目 ― 9,000円が、答えになるとき

そして、冒頭の話に戻ります。

ケータリングの仕込みの最中に思い出した、あのコンパクトなやつ。

BONIQ Vacuumer。9,000円です。

正直に書きます。

僕はこのメーカーを、長いあいだ懐疑的に見ていました。ネット広告があまりに多かったからです。

でも今回、低温調理器を買うにあたって、ちゃんと調べました。

そうしたら、使う人のことがきちんと考えられていた。それで買ってみたら、やっぱり本物だった。

だから、真空パック機のほうも安心して買えたんです。

選んだ理由は、性能ではありません

サイズです。

横36センチ、奥行き13センチ、高さ8センチ。重さ1.3キロ。

バットくらいの面積で、厚みは8センチ。バッグに縦に入ります。

消費電力は170ワット。現場の電源を選びません。

汁物のモードもあります。「液体を吸い込まないよう、弱い力でゆっくりと空気を抜いていく」というモードです。肉も普通にいけます。

シールだけ、というモードもあります。

音は、そこそこ出ます。でもフードセイバーよりは静かです。

家庭用なので、網目袋の問題は残ります。食材に跡は付きます。

でも、それでいいんです。

この機械に求めているのは、現場で余ったものを、その場でもう一度真空にすること。それだけです。

本体と袋さえ持って行けば、こぼれる心配なく持ち帰れる。帰ったら、そのまま冷蔵庫か冷凍庫に入れられる。

この負担が減るのが、とにかく大きい。


この記事で紹介したもの

この記事に出てきたものを、まとめておきます。

押すと、その説明のところまで戻ります。2台目のチャンバー式と4台目のTOSPACKは業務用なので、ここには載せていません。

まとめ ― 用途が違えば、正解も違う

いまは、2台の使い分けに落ち着きました。

使う場所機械理由
仕込みTOSPACK(65万円)熱いまま真空にできる。跡が付かない。汁物が確実
ケータリングの現場BONIQ(9,000円)小さくて持ち運べる。現場でもう一度真空にできる

9,000円の機械は、65万円の機械の代わりにはなりません。

でも、65万円の機械は、ケータリングの現場には持って行けないんです。

一度は「要らんわ」と言って買わなかったものが、いまは僕の鞄に入っています。

変わったのは、機械のほうではありません。

僕の状況のほうです。

道具に優劣をつけるのは、簡単です。

高いほうが良い、と言ってしまえば話は早い。

でも実際に5台使ってみて思うのは、そういうことではないということでした。

置かれた場所が違えば、答えも違う。

それだけのことです。


これから買う人へ

業務用を検討している人

  • 汁物を扱うなら、迷わずチャンバー式。ノズル式は汁が吸い上がります
  • 食材に跡を付けたくないなら、業務用。ツルツルの袋が使えるのは業務用だけです
  • 熱いものを扱う仕事なら、ホットパック機能を見てください。粗熱取りの手間が消えます

家庭用で十分な人

  • 網目の跡は、家庭用ではほぼ避けられません。ただ、家庭で使う分にはそれほど気にならないと思います
  • ロールタイプの袋が使えるものは、長さを自由にできて便利です
  • 汁物モードがあるかどうかは見ておいてください。あるとないとでは全然違います

今日の1曲

今日の一曲は、ユニコーンの「働く男」

氷水のボウルで、ゴムベラを回し続けていたあの時間。帰りの車で、こぼれた出汁を拭いていたあの夜。仕込みは、地味な重労働の連続です。

この歌の主人公は、今日も精力的に働きます。彼に、あの粗熱取りを任せたかった。

いまはTOSPACKが代わりに働いてくれています。ありがたいことです。

いつも僕はひとりきりフロに入って寝るだけ
いつも僕はひとりきり 明日のために寝るだけ
いつも僕はひとりきりいつも僕はひとりきり
眺める事さえできない君の髪を歩く姿を眠る事しかできない せめて夢の中ででも思い出す事ができない君の裸をとぎれる声を眠る事しか出来ない せめて夢の中ででも

ユニコーン「働く男」(作詞・作曲 奥田民生)より


本日もお読みいただき、ありがとうございました。

それでは、おやすみなさい。