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こんばんは、ひろしです。

今日は、トマト缶の話です。

料理人として使い分けてきた缶と、選ぶときのコツをまとめました。トマトの歴史や、僕がこの道に入ったきっかけの話は、別の記事にしました。

― 先に、結論だけ ―

毎日づかいなら、カゴメ(ホール)。

ここぞ、という一皿には、サンマルツァーノDOPを。

→ 詳しくは、この先で

トマト缶の選び方ボード。毎日づかいはカゴメのホール、丁寧に煮込む日はイタリアットとソル・レオーネ、無添加が気になるならストリアネーゼ、ここぞの一皿はサンマルツァーノDOP、酸味が強い日は砂糖より野菜と時間、開けたら別の容器へ

おすすめのトマト缶(用途で使い分ける)

用途で選ぶ、トマト缶
迷ったら、ここから
毎日づかい
中庸で失敗しにくい
クセが少なく、どんな料理にもなじむ。カゴメ
▼ この缶の紹介へ
丁寧に煮込みたい
果肉が厚め
煮詰めるとコクが出る。イタリアット/ソル・レオーネ
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無添加が気になる
有機を選ぶ
原料がシンプルで安心。ストリアネーゼ
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ここぞの一皿
サンマルツァーノDOP
香りも甘みもひと味ちがう。正規品を
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迷ったら、用途から選んでみてください。
トマトソースの冷製パスタ
トマトソースの冷製パスタ。

まずは、用途ごとに、おすすめを。

ただ、「これがいちばん」という一缶を押しつけるつもりはありません。料理によって使い分けるのが、いちばん現実的だと思います。

毎日づかいに

カゴメ 完熟トマト ホール。酸味がおだやかで中庸、扱いやすく、失敗しにくい一缶です。まず一台所にひとつ、という安心感があります。

大手のいいところは、品質が安定していること。カゴメは、海外を含む調達先の畑や工場まで出向いて品質を確かめている、と公式に説明しています。トマトの酸味や甘みは産地や時期で変わるものですが、大きな会社は、その違いを見極めて選んでいるのだろうと思います。

ワンランク上の日に

イタリアット(旧モンテベッロ)の有機ホール。そして、ソル・レオーネ。果肉が厚めで、酸味もおだやか。少し丁寧に煮込みたい日に。

無添加が気になる方に

ストリアネーゼの有機トマト。クエン酸を使っていないつくりで、素材のままに寄せたい方に向いています。

ここぞ、という一皿に

サンマルツァーノには、味の格が違う「DOP」の正規品があります。ナポリ近郊の決められた土地で、決められた品種・製法で作られ、認証を受けた本物です。

トマトソースのナポリピッツァ(マルゲリータ)
ナポリのマルゲリータ(トマトソースのピッツァ)。

正直なところ、割高です。毎日使いには向きません。けれど、ここぞという一皿には、やはり違う。

選ぶときは、缶に赤と黄のDOPロゴ、長い正式名称、缶ごとのシリアル番号があるかを目印に。「サンマルツァーノ種使用」とだけ書かれた缶とは、別ものです。種の名前だけなら、よそで育てたものでも名乗れてしまうのです。とくにアメリカ経由の輸入品には、名前だけの別物がまぎれていることもあるので、念のため。

DOP公式マーク
これが、DOPの公式マーク。
本物のサンマルツァーノDOPの3つの目印。長い正式名称、赤と黄のDOPマーク、缶ごとの番号

本物のサンマルツァーノDOP正規品

ちなみに、僕が店の現場でずっと頼りにしてきたのは、ソラニア社のホールトマト(カンパーニア産・業務用の大缶)。DOPの認証品ではありませんが、味と価格のバランスがよく、たっぷり使う日の相棒でした。

トマト缶の選び方(料理人の本音)

ホールトマト缶とカットトマト缶の違いの図解
ホール缶とカット缶、向いている料理がちがいます。

缶を選ぶときに、知っておくといいことを書いておきます。

トマト缶には、いくつか種類があります。まずは、ホールとカット。

  • ホール缶は、丸ごとのトマトが入っています。崩しながらソースにするのに向いていて、僕は手で潰すのが好きです。指のあいだから果肉がほどけていく、あの感じがいい。
  • カット缶は、あらかじめ刻まれている分、煮崩れしにくく、時短にもなります。野菜と一緒にさっと煮るような料理に便利です。

このほかに、なめらかに裏ごししたピューレやパッサータ、ぐっと煮詰めたペーストもあります。料理によって使い分けると、ぐっと幅が広がります。

ひとつ、知っておくといいことがあります。

トマト缶の酸味は、いつも同じではありません。

銘柄ごとに違うのはもちろん、同じ銘柄でも、その年や時期によって、濃さや甘み、酸味が少しずつ変わります。トマトは農作物ですから、当然といえば当然なのですが。

酸味が強いな、と感じた日も、あわてなくて大丈夫です。

砂糖を足す手もありますが、僕はあまりおすすめしません。本場のやり方は、もっと素直です。

  • 玉ねぎ、にんじん、セロリを、じっくり炒める。野菜の甘みを引き出す。
  • そして、しっかりと煮詰める。トマトそのものの甘みが、立ってきます。

しっかり煮詰めて甘みを出したあと、濃くなりすぎたら、天然水で濃度をゆるめることもあります。

砂糖の甘さではなく、トマトと野菜の甘さで。そのほうが、ずっと美味しい。

酸味が強い日の整え方。香味野菜をじっくり炒め、トマトを入れてしっかり煮詰め、濃すぎたら水でゆるめる

缶を選ぶときは、固形量(トマトそのものがどれだけ入っているか)と、原材料の表示も見てみてください。トマトと塩だけ、というシンプルなものほど、応用がききます。

トマト缶のラベルの見方。原材料名、固形量、原産国名の3か所

もうひとつ、現場の感覚を。

ピッツァを焼くときは、僕はサンマルツァーノのトマト缶を選びます。生地の上で水っぽくならず、火が入ったときの香りが違う気がするのです。

トマトピュレ・パッサータ・ペーストの違いの図解
ピュレ・パッサータ・ペーストの違い。

家で使うなら、手に入りやすいのはこのあたり。

トマト缶は、安全?

「トマト缶って、安全なの?」と気になる方も多いと思います。調べてわかったことと、台所で気をつけたいことを、まとめておきます。

缶の内側のこと

缶の内側には、さびや味の変化を防ぐための塗装がしてあります。そこから「BPA(ビスフェノールA)」という物質が、ごくわずかに溶け出すことが、気にされてきました。

日本で作られる食品用の缶は、BPAが溶け出す量をおさえる取り組みが早くから進み、2008年には業界のガイドラインもできています。国は、食べものからとるBPAは「極めて微量」と説明しています。いまは食品安全委員会が、あらためて評価を進めているところです。

EUは2024年12月に、缶の内側の塗料などにBPAを使うことを禁じる規則を決めました。ただ、野菜の缶詰などには、2028年1月までの切り替え期間があります。いま日本の店に並んでいる輸入の缶がどちらなのかは、ラベルだけでは分かりません。気になる方は、輸入元に聞いてみるのが確かです。

寄り道BPAの塗料は、なぜ使われてきたの? 代わりはあるの?タップで開きます

缶は、鉄やアルミでできています。

中身が金属にじかに触れると、缶の内側がさびて傷んだり、金属が中身に溶け出したり、色や味が変わったりします。内側の膜は、それを防いで、缶詰を何年ももたせるためのものです。

その膜の材料として、何十年も主役だったのが、BPAを原料にした「エポキシ」という塗料です。接着剤にも使われる、かたくて強いプラスチックの仲間です。

  • 金属に、しっかりくっつく
  • さびに強い
  • 缶を作るときの曲げ伸ばしにも、詰めたあとの高温の殺菌にも耐える

中身に合わせて、何百通りにも作り分けられてきたそうです。必要だから、使われてきた材料でした。

いまは、ほかの材料への切り替えが進んでいます。

  • ペットボトルと同じ仲間の、うすいフィルムを内側に貼った缶。日本では、2000年ごろにはもう使われていました。
  • BPAを使わない塗料。ポリエステルやアクリルなど。
  • 内側を塗らない「ブリキ缶」。果物や一部の野菜の缶で、中の空気でスズがほんの少し溶けることで、色や香りが守られます。

アメリカの缶の業界団体は、食べものの缶の98%が新しい塗料に切り替わった、と言っています。

それでも、トマト缶は後回しです。EUがいちばん長い猶予をつけたのが、トマト缶をふくむ、野菜・果物・魚の缶でした。理由は、規則に書いてあります。

  1. 酸っぱい。缶の中が酸性になるので、新しい塗料が安全で、ちゃんと働くかを確かめるのに手間がかかる。
  2. 早送りで試せない。缶詰は何年ももつもの。新しい塗料で本当に何年ももつかを、早送りで試す方法がない。
  3. 旬がある。とれる時期にまとめて缶詰にするので、その時期だけ缶が一気に要る。新しい缶だけでは間に合わない。無理に急ぐと、食べものをむだにしてしまう。

代わりの材料も安全か、という問題もあります。BPAの親戚のような物質に置きかえるだけでは、同じ心配がくり返されるかもしれない。それでEUは、害があると判定された親戚の物質も、まとめて禁止しました。

調べていて、フロンガスの話を思い出しました。便利だと思われていた材料に、あとから心配な点が見つかって、少しずつ置きかえていく。缶の内側でも、同じようなことが起きていたんです。

ただ、BPAが人の体にどこまで影響するかは、いまも専門家のあいだで意見が分かれています。悪者を決める話ではなく、長く働いてきた材料を、時間をかけて置きかえている途中の話です。

参考:欧州委員会規則 (EU) 2024/3190 の前文、日本缶詰びん詰レトルト食品協会「缶詰Q&A」、小島瞬治「缶内面塗装の動向」(日本接着学会誌、2000年)、米国缶製造者協会(Can Manufacturers Institute)

ラベルの「原産国」

輸入品のラベルにある「原産国名」は、缶詰にした国のことです。トマトを育てた国を書くことは、日本のルールでは求められていません。

日本で作った加工食品は、いちばん多い原材料の産地を書く決まりがあります。どこのトマトかを知りたいときは、まずラベルを見てみてください。

原材料の「クエン酸」

原材料に「クエン酸」や「酸味料」と書かれていることがあります。トマト缶の酸っぱさ(pH)を整えるためのもので、クエン酸は、生のトマトにもともと含まれている酸です。

素材のままに寄せたい方には、ストリアネーゼのように、クエン酸を使っていない缶もあります。

台所で、気をつけたいこと

  • 開けた残りは、缶のままにせず、ガラスや陶器の容器に移して冷蔵庫へ。早めに使い切ります。
  • ふたがふくらんでいる缶、押すとペコペコする缶は、使わずに処分します。
  • 胴の小さなへこみは中身に影響しませんが、ふちの継ぎ目が強く曲がった缶は避けます。

調理のとき、もうひとつ豆知識を。トマトソースは酸が強いので、アルミの鍋で長く煮ると反応しやすいといわれています。鍋の相性も、よければ覚えておいてください。

実際、アルミの鍋には「酸性やアルカリ性のものの使用は避ける」という注意を表示する決まりがあります(家庭用品品質表示法)。

紙パックや瓶のトマトもあります。どれがより安全か、順位をつける根拠は見つかりませんでした。使いやすさで選んで、いいと思います。

むやみに怖がる必要はないけれど、知っておくと、選ぶときも使うときも、安心できます。

参考:消費者庁「ビスフェノールAについてのQ&A」「食品表示基準Q&A」「家庭用品品質表示法(鍋)」、日本缶詰びん詰レトルト食品協会「缶詰Q&A」、欧州委員会規則 (EU) 2024/3190、ドイツ連邦リスク評価研究所

トマト缶を安心して使うための4つのこと。開けたら別の容器へ、ふくらんだ缶は使わない、原産国は缶詰にした国、アルミの鍋で長く煮ない

まとめ

毎日づかいなら、カゴメのホール。

少し丁寧に煮込みたい日は、イタリアットやソル・レオーネ。

素材のままに寄せたいなら、ストリアネーゼ。

ここぞの一皿には、サンマルツァーノDOPの正規品を。

酸味が強い日は、砂糖ではなく、香味野菜と、煮詰める時間で。

まとめ。用途ごとのトマト缶と、ラベル・酸味・保存の3つのポイント

この記事で紹介したもの

この記事に出てきたものを、まとめておきます。

押すと、その説明のところまで戻ります。買うところではなく、まず説明を読んでもらえたらうれしいです。

ホールトマト

毎日づかいに。業務用の大缶カゴメ トマトホール #1(2550g)↓ワンランク上の日に。有機のイタリア産イタリアット 有機ホールトマト 400g↓ワンランク上の日に。味と価格のバランスソルレオーネ ホールトマト 400g↓無添加が気になる方にストリアネーゼ 有機トマト缶 400g↓ここぞ、という一皿に。サンマルツァーノDOPラ・ヴァッレ サンマルツァーノ DOP↓ここぞ、という一皿に。カンパーニア州ソラニア トマトホール 2500g↓

ピューレ・パッサータ・ペースト

煮込まずに使いたいときの有機ピュレアルチェネロ 有機トマトピューレ 200g↓裏ごし済みのトマト。瓶入りイタリアット パッサータ・ルスティカ 700g↓少量で味を締める、濃縮ペーストムッティ トマトペースト 130g↓

あわせて読みたい

今日の1曲

今日の一曲は、リタ・パヴォーネの「Viva la pappa col pomodoro」。
トマトのパッパ、ばんざい、という歌です。

1964年の終わりから、イタリアで放送されたテレビドラマ『ジャン・ブッラスカの日記』の中の歌。
いたずら好きの男の子を演じて歌ったのが、当時19歳のリタ・パヴォーネでした。
作曲は、映画『ゴッドファーザー』の音楽で知られる、ニーノ・ロータ。

寄宿学校の子どもたちが、ひどい食事に抗議して、トマトのパッパをたたえる。そんな歌です。

パッパ・アル・ポモドーロは、固くなったパンとトマトで作る、トスカーナのスープ。
ピクサーの映画『あの夏のルカ』でも流れていたので、聴いたことがある方もいるかもしれません。

この記事の一曲を探していて、出会いました。
一回聴いたら、頭から離れなくなりました。

トマトを煮込むあいだに、どうぞ。
ただし、しばらく頭の中で流れ続けます(笑)

ドラマ『ジャン・ブッラスカの日記』(1964〜65年)の一場面。RAIの公式動画です。

本日もお読みいただき、ありがとうございました。